【目的】P2×7受容体は、ATPとの結合により活性化すると陽イオンの流入、分子量300程度までの分子を通す小孔の形成、サイトカインの放出、細胞死などを引き起こす。本研究では、マウスT細胞の分化・成熟によるP2×7受容体活性の変動による細胞死の調節について検討した。 【方法】4-6週齢雄性BALB/cマウスの胸腺および脾臓から分離した細胞を用いて実験を行った。P2×7受容体蛋白質の発現は特異的抗体を用いたウエスタンブロット解析により、細胞障害性は細胞外に漏出した乳酸脱水素酵素の活性を測定することにより調べた。細胞径の変化はフローサイトメーターを用いて前方散乱光を測定することにより解析した。 【結果および考察】P2×7受容体蛋白質の発現量は胸腺細胞に比べて脾臓細胞に多く、ATP処置による小孔の形成および細胞死の誘導も脾臓細胞においてより強く検出された。細胞径の変化について観たところ、胸腺細胞中約8割を占める未分化なCD4+8+胸腺細胞はATPにほとんど反応せず、CD4-8+胸腺細胞くCD4+8-胸腺細胞くCD8+脾臓細胞くCD4+脾臓細胞の順に強い細胞縮小の誘導が認められた。さらに、ATP処置により誘導される細胞縮小化ならびに細胞死は、細胞外液中の塩素イオン濃度を低下させることにより抑制されることを見出した。 本研究結果から、分化・成熟したT細胞において、ATPに高感度に応答して細胞死が誘導されることが明らかとなった。今後、末梢でのT細胞の機能制御におけるP2×7受容体の役割を調べることが重要と考えられる。
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