研究課題
前年度までに、周期的伸展刺激が培養前駆脂肪細胞の分化過程におけるシクロオキシゲナーゼ2の発現を一過的に上昇させ、その際に同酵素の基質となりうるエイコサペンタエン酸(EPA)を共存させることにより、単独では分化抑制効果が少ない僅かな伸展量と低濃度のEPAの組み合わせによっても、脂肪細胞分化が抑制されることを見いだした。本年度は、このインビトロでの現象をヒントにして、メカニカルストレスとEPAの併用による個体成長過程における脂肪組織の肥大化制御の可能性を検討した。脂肪組織が発達しつつある離乳期直後(3週齢)の正常マウスに、エイコサペンタエン酸エチルエステル(エパデール)(1g/kg)或いは対照薬を連日経口投与するとともに、保定して下腹部に小型バイブレーターを押し当て、精巣周囲脂肪組織周辺組織に100Hz、30分間のバイブレーション刺激を1日2回、16日間与えた。摂餌量、体重増加率、脂肪組織および血漿中の生化学および脂肪細胞マーカを測定した。その結果、バイブレーション、エパデール、いずれも単独では体重増加に対してごく僅かな抑制効果のみしか見られなかったが、エパデールとバイブレーション刺激の両方を与えた群は、明らかに体重増加率が有意に抑制された。統計的有意差は得られなかったが血漿中レプチン濃度の低下傾向が見られ、いずれかの脂肪組織の減少を推定した。しかし、精巣周囲,腸間膜、腎臓裏、各部位の脂肪組織重量と中性脂肪含量、血漿中の生化学マーカには明確な違いは見いだせなかった。次年度は、体重増加率の低下と脂肪組織での分化程度に明確な対応を見いだすべく、更に検討を進める。また、遺伝的肥満モデルや高脂肪食による肥満モデルの脂肪細胞肥大化過程に対するメカニカルストレスの効果を明確にするとともに、培養細胞レベルで見いだした分化抑制との異同を分子レベルで明らかにすることを目指す。
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Pflugers Archiv-European Journal of Physilogy 451
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