研究課題/領域番号 |
17590074
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
深井 文雄 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90124487)
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研究分担者 |
兒玉 浩明 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (80205418)
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キーワード | フィブロネクチン / テネシン / インテグリン / 接着 / 細胞死 / アポトーシス / シンデカン / Ras / MAP-Kinase pathway |
研究概要 |
TNIIIによるがん細胞死誘導における活性型Rasの関与の究明---Rasが恒常的活性化しているWI38VA13細胞では、TNIII高用量によってβ1インテグリンを強く活性化すると細胞がアポトーシスを引き起すのに対し、低用量によってインテグリンを弱く活性化すると細胞の生存がむしろ亢進すること、活性型ras遺伝子を一過的導入するとアポトーシスが誘導されることが判明した。また、WI38VA13細胞をMEK阻害剤処理すると、Rasの活性化が顕著に上昇することも明らかになり、Ras/MAPK経路が過剰の活性化シグナルに曝されると、ネガティブフィードバック機構が機能してERKの活性化抑制が起こることが示された。この時のERK不活性化のアポトーシスへの関与を明らかにすべく、現在、恒常的活性型および不活性型mek遺伝子安定発現株を作製している。 TNIII誘導性がん細胞死の分子機構の究明--TNIII誘導性細胞死とJNK活性化の関連を解析したが、JNKの関与はないものと考えられた。一方、TNIIIによってPI3-K/Akt経路が不活性化することが新たに明らかになったことから、この現象とTNIII誘導性細胞死との関連を明確にすべく、恒常的活性型および不活性型Akt遺伝子導入細胞株を調製している。更に、TNIIIによる細胞死誘導に先立って、Aktキナーゼ基質であるBadのリン酸化の低下ならびにBcl-2/BclXl発現低下が認められ、アポトーシス誘導との関連が推測された。 インテグリン凝集性ナノ粒子の分子設計--TNIIIによるがん細胞死の高率化を目的としたインテグリン凝集性ナノ粒子の調製に先立って、ペプチドTNIII内の活性配列の限局を実施した結果、TNIIIの活性領域YTITIRGV中の2ヶ所のIleと塩基性アミノ酸Argが活性発現に必要であることが明らかになると共に、この知見を更に発展させることにより、TNIIIの作用を媒介する細胞膜受容体の実体が明らかになった。即ち、塩基性TNIIIは細胞膜上の酸性分子ヘパラン硫酸プロテオグリカシに結合すること、また、受容体型プロテオグリカンの一つであるシンデカン-4がTNIIIの作用を媒介していることが明らかになった。更に、このシンデカン-4は、従来の知見とは異なり、細胞外領域がインテグリンと直接相互作用することで活性化するという新しい機構が機能していることが示された。来年度は、これらの知見も含め考慮することにより、がん細胞をより高率に殺傷するインテグリン凝集素の開発を進めたい。
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