発生や分化などに伴って変化する硫酸化グリコサミノグリカンの構造が、その機能、特に細胞増殖・分化因子との相互作用能の変化と相関するのかを明らかにすることを目的として、下記の3項目の研究を行なった。 【1】ヘパラン硫酸(HS)の生合成酵素であるEXT1を欠損させたマウスの産生するHSが、野生型のマウスの産生するHSに比べて短いことを既に見い出している。そこで、野生型マウスとEXT1欠損マウスの産生するHSを調製し、それらと様々な細胞増殖・分化因子との相互作用の解析を試みた。しかし、現在、EXT1欠損マウス由来繊維芽細胞の状態が良くなく、解析に十分な量の変異体HSが得られていない。共同研究者のウプサラ大学Kusche-Gullberg博士から再度細胞の供給を受け、実験をやり直す予定である。 【2】アフリカツメガエル胚のグリコサミノグリカンの構造の変化が、発生過程で必要な様々な細胞増殖・分化因子との相互作用能をも変化させているのかを明らかにするため、異なる発生段階の胚より調製したグリコサミノグリカンを用いて、細胞増殖・分化因子との相互作用をBIAcoreを用いて速度論的に詳細に調べた。また、発生段階の異なる胚の産生する硫酸化グリコサミノグリカンの鎖長や硫酸化ドメイン構造などについても解析した。発生に伴って、細胞増殖・分化因子との相互作用能や多糖鎖の構造が変化することが明らかになった。この研究成果については、現在論文投稿のための準備中である。 【3】発生や神経再生の研究に非常によく用いられているモデル動物であるヒドラについて、グリコサミノグリカンを精製し、その構造を解析した。より高等なモデル生物である線虫やショウジョウバエよりも高硫酸化されたコンドロイチン硫酸を含んでいる点が特徴的であった。この研究成果について、現在論文作成中である。
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