研究課題
基盤研究(C)
テロメラーゼ遺伝子の導入によって不死化し、さらにクローン化したヒト間葉系幹細胞約20種のクローンのうち、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞のすべてに分化誘導可能な高分化型クローンNo.12、あるいはラット胸腺から分離した問葉系幹細胞様細胞クローンを用いて、遺伝子発現プロファイルを全ゲノム型DNAチップによって解析した。その結果、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞の各分化方向に特徴的な遺伝子発現パターンが見られた。この幹細胞分化とDNAメチル化の関わりについて調べるため、これら幹細胞クローンの骨芽細胞および脂肪細胞への分化過程におけるグローバルなメチル化の変化について、CpGメチル化アレイを用いて調べた。その結果、ヒトについては骨芽細胞分化について11個、脂肪細胞分化について4個の遺伝子を、分化に伴ってメチル化状態が変化する遺伝子の候補として同定した。さらに本研究において、従来のBisulfate法を大幅に改良して、短時間でメチル化部位の同定が可能な画期的なDNAのメチル化検出手法の開発に成功し、本法の使用により、全ゲノムレベルで幹細胞分化に伴ってDNAメチル化のレベルが変動する82個の遺伝子を単離することに成功した。これらは幹細胞分化の制御やメチル化再構成に関わる鍵となる遺伝子と考えられた。現在、幹細胞分化におけるエピジェネティック変化の実体や詳細は全く不明であるので、この研究は、幹細胞分化機構の解明に重要な手がかりを与えると考えられ、さらに、このメチル化の制御によって幹細胞に任意の分化を誘導することも可能と思われることから、この研究成果は幹細胞研究や再生医療に大きなインパクトを与えると予想される。
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