真核細胞の核で合成されたmRNAは細胞質に運ばれた後、必ずしもただちに翻訳に使われて分解されるわけではなく、必要になるときまで翻訳されずに貯蔵されているものも多い。mRNAは常に蛋白質との複合体mRNPとして存在するので、mRNAの翻訳活性や安定性の調節には、どのような蛋白質とmRNPを構成しているかが重要な役割を果たす。本研究ではアプリカツメガエル卵母細胞を出発材料としてmRNPを構成する蛋白質の同定と機能解析を行い、その情報をもとにヒト培養細胞で細胞内局在を検討した。本研究から得られた主な結果はつぎの通りである。 1.カエル卵母細胞の主要なmRNP構成因子であるY-ボックス蛋白質FRGY2の免疫沈降をおこない、FRGY2と複合体を形成している蛋白質を網羅的に単離、同定した。これらのほとんどはRNAを介してFRGY2と複合体となっていると考えられた。また、FRGY2とRNAを介さずに結合している因子として、我々が既に同定していたYBAP1のカエルホモログが見いだされた。 2.さらにこの複合体中に新規因子xRAP55を向定し、抗体を作製して生化学的解析を行いこの蛋白質がmRNP因子であることを明らかにした。 3.RAP55が、もう一つのmRNP構成因子Xp54と結合すること、卵母細胞中及び無細胞翻訳系で翻訳の抑制に働くことを明らかにした。 4.ヒトRAP55およびY-ボックス蛋白質YB-1が、培養細胞の細胞質でいくつかの点状の局在を示すことを具いだした。「これ6の点は翻訳されていないmRNAが蓄積し、mRNAの分解の場と考えられているP-ボデイと一致した。細胞に熱ストレスを与えるとこれらの蛋白質はストレス顆粒に蓄積した。 5.RAP55の翻訳抑制やP-ボデイ局在に必要なドメインを明らかにした。
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