研究概要 |
4,4'(1,4-Tetramethylenedicarbonyldiamine)bis(1-hexylpyridinium bromide)をリード化合物とし,リンカー部位にamideまたはthioether部位を含み,且つ,リンカーのmethylene鎖やpyridine環のN-alkyl鎖の長さが異なる種々のpyridinium塩dimerを合成すると共にその抗マラリア活性を測定したところ,今年度に新しく合成した化合物中に,既存薬であるchloroquineの18-27倍の活性を示し,そのIC_<50>値が1nM以下であるものを見出した(これまで本申請者が合成した化合物中に,IC_<50>値が1nMを切るものは無かった)。構造活性相関的には,pyridinium塩のN-置換基を変化させることで抗マラリア活性が大きく変化した。特にalkyl鎖を導入した場合,活性はその鎖長に依存し,活性発現には適度な長さのalkyl鎖が必要であることが判明した。さらに,benzyl基やcyclohexyl基を導入した場合には活性が減少することから,N-置換基として嵩高い置換基を持ってくることは活性発現に不利に働くように思われた。更に,N-alkyl化piperidine dimerに抗マラリア活性が認められず,また,N-alkyl化してない化合物には全く活性が認められなかったことから,抗マラリア活性発現のためにはカチオン性を有することが必須であり,N-alkyl長鎖の変化に伴い活性が増減することを見出した。次に,抗マラリア活性が最も優れている化合物を用いて,熱帯熱マラリア原虫のFCR-3株の同調培養を行ったところ,マラリア原虫のring stageにおいては原虫の阻害は全く認められず,培養18時間過ぎから阻害が見受けられた。一方,schizont期においては,培養初期から阻害作用が認められた。従って,本化合物はFCR-3株のlate trophozoite期並びにschizont期において阻害作用を発揮していることが明らかになった。
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