研究概要 |
HIV逆転写酵素阻害活性と阻害機構の解析 カチオン性、アニオン性、アミノ酸系フラーレン誘導体のHIV逆転写酵素阻害活性を検討しアミノ酸系誘導体に強い阻害活性を見いだした。最も強い活性を有する誘導体は置換基ピロリジン環の2,5位にカルボン酸を、ピロリジン環窒素に酢酸が結合したものであり、現在、抗HIV薬として臨床上用いられているネビラピンよりも100以上高い活性であった。 この誘導体のHIV逆転写酵素阻害機構の解明ため、基質(鋳型RNAならびにヌクレオチド)とフラーレン誘導体の濃度を変化させラインウィーバー-バークプロット解析を行った。その結果、非核酸系HIV逆転写酵素阻害薬と同様にRNA、ヌクレオチドいずれの基質に対してもフラーレン誘導体は競合していなかった。 新規フラーレン誘導体の合成と構造活性相関 カチオン性のジメチルピロリジニウム置換基を有するフラーレン誘導体ががん細胞増殖抑制効果と抗菌作用を示すことをすでに明らかにしている。本結果を基にピロリジン環やN原子に様々なアルキル置換基を有する誘導体の合成を行い、それらの活性を測定した。中鎖アルキル基をピロリジン環、N原子のいずれに導入してもがん細胞増殖抑制効果と抗菌作用ともに活性の向上が見られた。しかし、長鎖アルキル基では抗菌作用のみ低下し、がん細胞増殖抑制効果と抗菌作用では作用機構が異なることが示唆された。 さらに新たなカチオン性置換基としてスルホニウム基を有するフラーレン誘導体の合成も行った。今後、がん細胞増殖抑制効果と抗菌作用を検討する。
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