研究概要 |
本研究の最終目標は,これまで知られていないヒトタンパク質中の抗高血圧作用ペプチドにスポットを当て,高血圧症の予防もしくは治療に利用できる,ヒト由来ペプチドに基づいたツールを創製することである。本研究では,これらのヒトタンパク質由来の新規なアンジオテンシンI変換酵素阻害ペプチド(ACE)を発見し,そのtransition-states analoguesからデザインされるレトロインバルソ型の選択的酵素阻害ペプチドアナログを創製することで新たな医薬品素材を提供する。 これまでの研究成果から,見出された活性ペプチドのうちC末端にトリプトファン(Trp, W)残基を有するものに,アンジオテンシンI変換活性のみを強く阻害しブラジキニン分解活性はあまり阻害しない,という選択的阻害が見られ,既存の医薬品の欠点である空咳等の副作用を減ずる効果のある新規医薬品の開発も期待できることがわかった。 [研究の成果] 1.C末端にTrp残基をもつ各種誘導体を調製しACE阻害活性を測定したところ,C末端カルボキシル基がフリーでかつN末端アミノ基が誘導体化されているものに活性が認められた。 2.構成アミノ酸全てがD型でかつ逆向きの配列を有するレトロインバルソ型ペプチドとして,3種のアナログを合成し,さらに1.の結果に基づきTrpの末端をフリーのカルボン酸型とするためにマロニル型(mal)のレトロインバルソ型ペプチドアナログを合成し酵素阻害活性を測定した。 (1)_dW_dA_dV,(2)_dW_dS_dV(選択的阻害のみられたVAW, VSWのレトロインバルソ型) (3)mal-_dW_dA_dV((1)の_dWの末端にマロニル基を導入してカルボン酸型としたレトロインバルソ体) (4)mal-_dW_dS_dV((2)の_dWの末端にマロニル基を導入してカルボン酸型としたレトロインバルソ体) 上記6種のレトロインバルソ型ペプチドアナログについて,基質としてHHL(Angiotensin I 型),HFR(Bradykinin型),Angiotensin I及びBradykininを用いてACE阻害活性を測定したが,顕著な阻害活性は認められなかった。Trpの末端はフリーのカルボン酸型であると同時に,適切な分子上の大きさでないと阻害活性を示さないと考えられた。
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