本研究はIV型アレルギー反応に分類される遅延型皮膚過敏症反応に着目し、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)で感作し、再びDNFBを塗布した耳の腫脹を計測する方法により接触性皮膚炎に対する影響をスクリーニングした結果、プラスチック等に添加されているテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)に顕著な耳介肥厚増加が観察され、接触性皮膚炎増強作用があることを確認したことに基づき、TBBPAによるIV型アレルギー反応としての接触性過敏症を増強せる作用機構を明らかにすることを目的としている。以下に本年度の成果を示す。 1 TBBPAのDNFB誘発接触性過敏症増強に及ぼす投与の量、期間、タイミングの検討 マウスにTBBPA 460μmol/body/dayを塗布することにより、DNFB誘発接触性過敏反応によるマウスの耳介腫脹反応は増強した。また、その濃度は投与量依存的ではなく、逆U字曲線を示した。TBBPAを塗布する期間を変化させたところ、TBBPAが接触性過敏反応増強に及ぼす塗布のタイミングは、耳介腫脹反応惹起時でもなく、感作前7日間でもなく、感作後7日間であることを明らかにした。 2 抗原特異的T細胞の増殖に対する影響 DNFB誘発接触性過敏反応を増強させる機構の一つとして、抗原特異的T細胞の異常増殖が考えられる。そこでマウスの各リンパ節(腋窩部、胸筋部、膝窩部、鼠頸部)を取り出し、単細胞懸濁液を作成して細胞への^3Hチミジンの取り込みを液体シンチレーションカウンターで測定することにより、その増殖試験を行なったところ、所属リンパ節から採取したDNFB特異的な記憶T細胞はTBBPA暴露によって増殖した。 3 リンパ節及び脾臓からのサイトカイン産生量 記憶T細胞から産生され、接触性過敏反応における炎症に重要な役割を果たしているIFN-γの産生はTBBPA暴露によって増加した。しかし、炎症を抑制するIL-10は変化しなかった。
|