化学物質の中にはIV型アレルギー反応に分類される遅延型皮膚過敏症反応を増悪化させるものがあると仮定し、各種化学物質を投与したマウスに、ジニトロスルオロベンゼン(DNFB)で感作し、再びDNFBを塗布した耳の腫脹を計測する方法による接触性皮膚炎に対する影響を検索した結果、テトラブロモピスフェノールA(TBBPA)に接触性皮膚炎増強作用があることを確認した。 TBBPAによる接触性過敏反応増強作用の用量-反応曲線、また、どのような投与タイミングで発現するかの詳細を検討した。雌性BALB/c系マウスの背部に7日間、毎日TBBPAを塗布し、7日目にDNFBを腹部に塗布して感作した。さらに7日間TBBPAを背部に塗布し、14日目にDNFB塗布により反応を惹起させ、耳介の厚さを測定した。この耳介腫脹反応は、投与量依存的ではなく、逆U字曲線を示した。TBBPAが接触性過敏反応増強に及ぼす塗布のタイミングは、耳介腫脹反応惹起時でも、感作前でもなく、感作後7日間であることを明らかにした。 TBBPAによる接触性過敏反応増強作用の機構解明を次の点から行った。(1)各リンパ節から採取した細胞を用いた高原特異的T細胞増殖試験の結果、TBBPA塗布部から最も近い鼠険部リンパ節から採取した細胞がTBBPA非暴露群に比較し、顕著にDNFB特異的T細胞の増殖を示した。(2)接触性過敏反応における炎症に重要な役割を果たしているIFN-γのDNFB特異的T細胞からの産生がTBBPA暴露によって増加した。しかし、炎症を抑制するIL-10は変化しなかった。(3)耳介および肝臓中の還元型グルタチオン濃度はTBBPA暴露により低下するものと予想したが、実際には増加しておりこの増強反応とは関係していないと推察した。これらの結果から、TBBPA暴露が抗原特異的T細胞の増殖に影響を与えたことが増悪化の引き金となっていると推察した。
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