研究概要 |
平成18年度は12のBCG亜株と親株のウシ型結核菌Mycobacterium bovis、ヒト型結核菌Mycobacterium tuberculosisについて、NOストレスにおける感受性について検討した。加えて、宿主細胞に対する自然免疫の誘導活性に与える影響を検討するために、宿主細胞からのNO産生誘導能旨、サイトカイン・ケモカイン誘導能について検討を行った。各種ストレスに対して、M.tuberculosis、M.bovisはBCG亜株と比べて耐性であり、病原性と関連している結果となった。NOストレス、酸化ストレス耐性に関与していると報告されている遺伝子(ahpC, noxR1, noxR3)について遺伝子配列に変異は認められなかったことから、他の遺伝子や因子が関与していることが示唆された。NO産生誘導能はPasture研究所からの分与時期が早い早期分与株に強い傾向が見られ、細胞壁構成成分のミコール酸の組成が関与していることが明らかとなった。A549からのinterleukin6(IL-6)、IL-8の産生を検討したところIL-6の産生誘導能はTokyo株、Danish株で誘導がかからなかった。IL-8については初期分与株の方が高い傾向が見られた。このように、生化学的な活性とin vitroでの生物学的な特徴、さらには宿主細胞内での生存能に相関が認められなかった。このように、Pasture研から分与時期が早い株はM.bovisに近いin vitroでの生物学的特徴を持っことが示された。生物学的特徴がM.bovisと近いTokyo株はワクチンとして副作用が少ないことから、この2株の病原性の違いについて、動物実験を用いた実験系でさらに詳細に研究することにより、結核菌の病原性とBCGワクチンの有効性に問題の解答を与えるものであることが予想される。
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