カドミウム腎症は、カドミウムに汚染された食品の経口摂取により慢性的に体内に取り込まれたカドミウムが腎臓に集積することにより発症する。しかしどのくらいの経口曝露量でカドミウム腎症が発症するのか疫学的データのみであり、カドミウム摂取基準値の実験科学的な根拠のためにもカドミウムの体内動態の解明とカドミウム腎症の用量-発症関係の解明が必要とされている。本研究の目的は、1.カドミウムの体内動態を解明することにより、慢性的なカドミウム経口曝露のマウス病態モデルの作成方法を確立する。2.確立した病態モデルを用いてカドミウム腎症の指標となる近位尿細管再吸収機能障害(ファンコニ症候群)の発症メカニズムを解明することである。 平成17年度は、メタボリックケージを用いた飲料用水への1.0ppmのカドミウム混入により慢性経口カドミウム曝露を行い、カドミウムの尿、便、血液および腸管、肝臓、腎臓への蓄積をフレームレス原子吸光測定装置での定量により曝露期間-蓄積速度関係を明らかにすることを試みた。 その結果、肝臓および腎臓中のカドミウム濃度は、投与1目目より上昇をし続けたのに対し、腸管上皮内のカドミウム濃度は2日目に極大値(1日目の347±161%)を示した後、漸減した。このことからカドミウム投与2日目から3日目にかけて、腸管吸収に関わる何らかの因子が変化した可能性が示唆された。現在、それらの因子としてDMT1およびメガリンの関与についてReal-time PCRおよび免疫染色による検討を実施している。 今後の方策としては、その他の因子の関与についてマイクロアレイ方を用いた包括的な検討を計画している。また、浸透圧ポンプの埋め込みによる早期カドミウム腎症発症モデルの作成を試みる予定である。
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