研究概要 |
1.表皮角化細胞におけるAhRの機能解析 a)AhRの漂的遺伝子について:昨年度はALRがSlugの転写を活性化する事を示した。培養細胞を用いた創傷治癒実験において、盛んな運動能を示す細胞では、Slug発現が高い事が報告されている。このような細胞でAhRの発現を免疫染色で調べた結果,AhRは核に認められた。Slugは細胞の上皮-間葉転換の誘導に重要な働きを持つ。AhRを活性化し,Slugが誘導される条件下で、EMTマーカーの変化を免疫染色で調べた結果,上皮性マーカーのcytokeratin18は減少し,間葉性マーカーのfibronectinは増加した。これらより、ケラチノサイトにおけるAhRの活性化は、Slugの誘導を介して上皮-問葉転換の誘導に重要な機能をもつことが示唆された。 b)創傷治癒過程におげるAhRの発現と機能:マウス背部の皮膚を一部切り取り,経時的に組織を固定して治癒過程を組織染色して調べた。およそ3日目から活発な細胞運動を示すと思われる細胞が認められたが,このような細胞でAhRが活性化されているという結果は得られなかった。7-9日目では、ほとんど治癒した表皮組織の顆粒層の一部に、強いAhRの染色を認めた。これは、AhRが細胞分化に必須なtransglutaminaseの転写を活性化するという報告と一致する。 2.XRE-reporter遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスの作製 AhR/ARNTによる転写調節活性を個体レベルでモニターするためにXRE-LacZを組み込んだトランスジェニックマウスの作製を試み、このレポーター遺伝子をゲノムDNAに組み込んだ6系統のマウスを得た。AhRのリガンドであるメチルコラントレンを腹腔注射すると、肝臓にLacZ mRNAが誘導される事をRT-PCRで確認した。現在,交配してマウスを増やし,発現の強い系統を選別している。
|