研究概要 |
AhR/ARNT複合体によるXREを介した転写調節活性は、細胞密度の低下に伴って上昇する。同様な細胞密度に依存した転写調節は、最近、大腸癌細胞においてβ-catenin/Tcf複合体によるSlugの転写活性化として報告されている。ヒトSlug遺伝子の転写調節領域には複数のXREコンセンサス配列がみられることから、我々はこの遺伝子をAhR/ARNTの標的遺伝子の候補として考えた。 ヒトSlug遺伝子の転写調節領域をPCRで増幅し、Slug-Luciferaseレポーター遺伝子を構築した。AhR活性化に伴ってレポーター活性は増加し、Slug mRNAの増加がRT-PCRで検出された。開始コドンの約800bp上流に位置するXREにAhR/ARNT複合体が結合する事が、ゲルシフトおよびChlPアッセイにより示された。 培養細胞を用いた創傷治癒実験において、盛んな運動能を示す細胞では、Slug発現が高い事が報告されている。このような細胞でAhRの発現を免疫染色で調べた結果,AhRは核に認められた。Slugは細胞の上皮-間葉転換の誘導に重要な働きを持つ。AhRを活性化し,Slugが誘導される条件下で、EMTマーカーの変化を免疫染色で調べた結果,上皮性マーカーのcytokeratin 18は減少し,間葉性マーカーのfibronectinは増加した。これらより、ケラチノサイトにおけるAhRの活性化は、Slugの誘導を介して上皮-間葉転換の誘導に重要な機能をもつことが示唆された。
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