我々は、代謝拮抗抗癌剤の中でもヌクレオシド系核酸代謝拮抗剤のテーラーメード治療および抗腫瘍効果の増大や副作用の軽減を目指した新たな治療法の開発に資することを目的に、我々が開発中の抗腫瘍性ヌクレオシド、CNDACおよび肺癌・膵癌の治療薬であるゲムシタビン(dFdC)の臨床効果を的確に予測できる感受性規定因子の解明研究を企画した。平成18年度は、昨年度検討した臨床肺癌組織19検体に加え、肺癌(30検体)、胃癌(30検体)、大腸癌(28検体)、膀胱癌(12検体)等、148検体における核酸代謝酵素[デオキシシチジンキナーゼ(dCK)、シチジンデアミナーゼ(CDA)およびリボヌクレオチドリダクターゼ(RR)]ならびにヌクレオシドトランスポーター(ENT1)のタンパク発現を解析した。また、臨床肺がん組織におけるCNDACおよびdFdCに対する薬剤感受性をコラーゲンゲルマトリクス(CGM)法により解析し、タンパク発現量との比較解析を行った。その結果、dCKとENT1タンパクはほぼ全ての検体で発現が認められ、RRM1の発現は約9割弱に認められた。一方、CDA発現は約3割に認められ、それらの中には明らかに強発現を示す検体があった。肺癌40症例における薬剤感受性とタンパク発現量との関連性を統計学的に解析した結果、ENT1発現と感受性には関連性は見られなかったが、CDA発現はdFdC感受性と有意に相関すること、RRM1発現量あるいはdCKに対するRRM1の発現量比(dCK/RRM1比)はCNDACおよびdFdC感受性と強く関連することが明らかになり、有用な感受性予測マーカーとなる可能性が示された。
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