研究概要 |
以前、我々は腎臓に発現するラットOCT2の発現量がテストステロンによって調節を受けることを報告した。本研究では、テストステロンによるrOCT2の発現調節における転写調節機構を解析した。 rOCT1、rOCT2、rOCT3プロモータ領域に相当する約3000-bpの断片を単離し、ラットアンドロゲン受容体とともに腎上皮細胞株LLC-PK1に導入後、プロモータ活性を測定した。 作成したコンストラクトのうち、rOCT2のプロモータ活性のみがテストステロンによって促進され、rOCT2のみに発現量の性差を認められるという以前の報告と対応する結果が得られた。この促進は、アンドロゲン受容体拮抗薬のニルタミド(nilutamide)によって阻害されたことから、アンドロゲン受容体特異的な機構であることが判明した。rOCT2プロモータを段階的に切除し作成したコンストラクト、及びrOCT2プロモータのアンドロゲン応答配列(ARE)と考えられる配列の変異コンストラクトを作成し、レポーターアッセイを実施したところ、-3,000位、及び-1,300位付近に存在する2箇所のAREがテストステロンによるプロモータの促進に重要な役割を果たすことが明らかになった。 これらの結果から、テストステロンはアンドロゲン受容体を介して転写調節することにより、rOCT2特異的に発現調節を行うことが明らかになった。本研究成果は、SLC22ファミリーのテストステロン依存的な発現調節における転写機構を解明した初めての成果である。
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