研究概要 |
本研究は、患者の治療薬の薬物代謝酵素の遺伝性情報を知ることにより、個々の患者の治療薬、今回は特に抗てんかん薬の薬物動態を予測して処方設計を支援すること、さらに薬物相互作用による有害作用を未然に防止するため企画した。今年度は、臨床研究に入る前に実験動物を用いて薬物代謝酵素誘導薬投与時の血中と肝臓中の産生mRNA量の相関を検討した。具体的にはWistar系雄性ラットを使用して、カルバマゼピン0,50,100,200mg/kgを3,7,14日間腹腔内投与した。最終投与24時間後に断頭し血液と肝臓を採取した。採取した血液と肝臓はそれぞれRNA抽出を行い、逆転写反応を行った。その後real time PCRによるCYP3AとCYP2CのmRNA量の定量を行った(内部標準;GAPDHmRNA)。 まず、カルバマゼピン50〜200mg/kg投与時のCYP3AおよびCYP2C mRNA量について検討した。その結果、CYP 3 Aについては、3-7日間投与では相関性が認められなかったが14日間投与において認められた(r=0.71)。一方、CYP2Cについては、血液中の検出値が極めて低く相関性をみることができなかった。しかしながら肝臓中のCYP2CのmRNAにおいて、投与7日間以上で用量依存的な減少傾向がみとめられた。これらのことを考察すると、肝においてはCYP2C mRNA量がCYP3A mRNA量の約1〜10倍であるのに対して、血液中ではCYP2C mRNA量がCYP3A mRNA量の1/10〜1/100倍であった。そのことを考えると肝臓中から血液中にCYPが分泌される間に何らかの影響によりCYP2C量の減少、またはCYP3A量の上昇が見られたことも考えられる。しかしながらCYP3AおよびCYP2CのmRNAについて、血液と肝臓での相関性の検出ではさらに考慮すべき点があり、現在サンプル採取時間の検討、さらにフェニトインについて検討中である。次年度はこれらの結果を踏まえて、患者におけるカルバマゼピンならびにフェニトインの血中濃度と酵素蛋白量の関係を調べる予定である。
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