研究概要 |
本研究は、科学研究費・萌芽研究(H15〜16年)で立ち上げた薬学部情報薬局と、科学技術振興機構・社会技術研究開発センターのプロジェクトで構築している医薬品安全性情報コミュニティの知的共有基盤を、薬学部における医療薬学教育研究に応用し有効活用するための発展的研究である。 これまでに、医薬品安全性情報コミュニティの知的共有基盤として、薬物催奇形性に焦点を当てた医薬品基本情報、症例情報および化学構造情報に関する双方向・統合データベース(DB)・システム、anzen-drug comを構築した。本システムでは、情報検索だけでなく、症例DBには医療消費者が妊娠中の服薬経験を登録できる。また、独自のアルゴリズムに基づき開発したSimScoreは、安全性未知の化合物と催奇形性薬物間の化学構造類似度の定量的算出が可能である(特許出願2005-348393)。H18年10月より医薬品安全性情報コミュニティ・サイト(http://anzen-drug.ph.tokushima-u.ac.jp/)を立ち上げ、現在、システムの修正・改良を目的にDBをweb上で一部試験公開中である。 教育面においても、DB収載情報を学部や大学院学生の教育研究に利用している。特に、定量的構造活性相関(QSAR)解析手法により薬物のヒトにおける母乳移行性や胎盤通過性に関する予測式を立て、これを臨床で調査した産婦人科処方薬に適用し、移行性の低い医薬品の妊婦・授乳婦へ選択的な使用に関する検討を行っている。 本研究による情報コミュニティの知的共有基盤の整備と薬学教育研究への活用は,根拠に基づく医療の実践と効率的な医薬品研究開発およびリスクコミュニケーションに寄与する情報医療薬学分野の人材養成に役立つと期待される。
|