研究概要 |
糖尿病患者にうつ病の罹患率が高いことから、糖尿病がうつ病を誘発・増悪する要因の1つである可能性が指摘されている。本年度の研究では、こその機序に高血糖ストレスに伴う視床下部-下垂体-副腎(HPA系)の異常が関与することを明らかにする目的で、corticotropine releasing hormone(ACTH)反復投与することにより、HPA系の過活動と高血糖を惹起した糖尿病ラットを使用して実験を行なった。抗うつ様効果は、抗うつ薬のスクリーニングモデルである強制水泳法において不動時間を測定することにより行った。ACTHを反復投与したラットでは、三環系抗うつ薬のimipramine(10mg/kg,ip)14日間反復投与による抗うつ様効果(不動時間短縮作用)が消失した。この結果は、ACTH反復投与ラットが治療抵抗性の動物モデルとして有用であることを示唆している。一方、電気刺激(ECS;50mA,0.2sec)の14日間反復負荷は、ACTH反復投与ラットにおいても顕著な抗うつ様効果(不動時間短縮作用)を示し、臨床で認められているECSの強力な改善作用が確認された。ECSの6日または14日間の反復負荷は、海馬のbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)の含量を著明に増加させた。しかし、imipramineの14日間反復投与は海馬BDNF含量に影響を示さなかった。 以上の結果より、三環系抗うつ薬に治療抵抗性を示すACTH反復投与ラットにおいて、ECSは顕著な抗うつ様効果を示すこと、ならびにその機序には脳内BDNFの増加が関与することが明らかになった。
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