研究概要 |
本研究では,下記の成果を得た。 1.カラムスイッチングHPLCによるNMDA受容体アンタゴニスト,キヌレン酸(KYNA)の高感度定量法を開発し,ケタミン処置ラット血漿中KYNA濃度の有意な上昇を初めて見出した。2.統合失調症モデル動物であるケタミン処置ラット血漿中グルタミン酸(Glu)濃度の有意な上昇,脳脊髄液中Glu濃度の減少がわかり,ヒト患者と同様であった。3.ヒト血清中KYNA濃度とグルタミン濃度が有意に相関していた。これは,キヌレニンアミノトランスフェラーゼIとグルタミントランスアミナーゼKが同一酵素であることに由来すると考えられた。4.HPLC-蛍光検出法によるキヌレニン(KYN)の高感度定量法を開発した。5.上記HPLC法により,ラット大脳,小脳および脳幹ホモジネート中KYNA定量が可能になった。6.キラルカラムを装着したカラムスイッチングHPLCにより,D-KYNが_L-KYNよりも有意にAUCが小さいことがわかった。7.統合失調症患者血清中Glu濃度の上昇は男性患者のみで見られ,一方,女性患者では血清中プロリン濃度が有意に上昇している結果を得た。8.HPLC-蛍光検出法による差アセチルアスパラギン酸(NAA)の高感度定量法を開発した。 9,6-Hydroxychroman骨格を基本構造にもつ,HPLC-電気化学検出用の新規誘導体化試薬を開発した。10.ラットにD-KYN投与時において顕著な血漿中KYNA濃度の上昇を確認。_D-KYNからKYNAへの代謝に,統合失調症関連遺伝子産物であるD-アミノ酸酸化酵素の関与を確認した。11.ラット脳マイクロダイアリシスを行い,NAA脳内投与時の有意なKYNA上昇およびGluやグリシンの放出抑制が見出された。 これらの成果はいずれも新規であり,統合失調症の発症機構解明や克服に向けての研究の一助として期待される。
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