平成18年度は、TAMおよび4-HO-TAMのN-グルクロン酸抱合反応が、腫瘍のTAM耐性化と関連があるか否かを明らかにすることを目的とする。すなわち、N-グルクロン酸抱合活性を示したUGT分子死湯で遺伝子をヒト乳がん培養細胞に組み込み、UGTを継続的に発現する安定発現細胞株を樹立し、TAMおよびtrans-4-HO-TAMに対する感受性の変動を検討する。 1)UGT安定発現乳がん由来細胞株の樹立:哺乳類細胞発現ベクターであるpIRES2-EGFPにUGTIA4cDNAを組み込み発現プラスミドを構築した。発現に用いた細胞株はエストロゲン感受性のヒト乳がん由来のMCF-7細胞を使用し、MCF-7細胞にUGTcDNAを組み込んだpIRES2-EGFPベクターをリポフェクタミンにより導入して形質転換を行い、安定に形質転換された細胞のスクリーニングを行った。UGTタンパク質の発現はウェスタンブロット分析により確認し、発現しているクローン細胞について細胞のミクロソーム画分を調製し、活性を測定したところTAMおよび4-HO-TAMに対してN-グルクロン酸抱合活性を示した。なお、このとき野生型MCF-7細胞ミクロソーム画分にはN-グルクロン酸抱合活性は認められなかった。2)UGT安定発現MCF-7細胞によるTAMの代謝:1)で樹立されたUGTIA4発現MCF-7細胞の培養液にTAMを添加して培養を行い、培養液を回収し、固相抽出法によりTAM代謝物を抽出した。抽出された代謝物についてHPLC分析を行った結果、TAM N-グルクロニドが培養液中に排泄されていることが確認された。これらのことから、UGTIA4安定発現MCF-7細胞が構築され、次年度において予定されているTAMおよび4-HO-TAMに対する耐性化能の検討に用いる実験系が確立された。
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