平成19年度は、18年度において樹立されたUGT1A4を継続的に発現する安定発現MCF-7細胞株(MCF-7-UGT1A4)を用いて、UGT1A4の発現がTAMに対する感受性に影響を及ぼすか否かを明らかにすることを目的とし、以下の検討を行った。まず、野生型MCF-7とMCF-7-UGT1A4各細胞についてエストロゲン在不在下における増殖実験を行ったところ、MCF-7-UGT1A4細胞は野生型MCF-7細胞と同等なエストロゲンに対する感受性を有していた。そこで、両MCF-7細胞について、TAMを培地に添加した増殖実験を行ったところ、野生型MCF-7細胞の増殖は著しく抑制されたのに比べて、MCF-7-UGT1A4細胞の増殖は抑制されず、TAM耐性化していることが明らかになった。さらに、両MCF-7細胞について、エストロゲン添加による増殖促進に対するTAMの抑制効果を検討したところ、やはりMCF-7-UGT1A4細胞はTAMに対して耐性能を有していた。次に、UGT1A4阻害剤であるトリフルオペラジンを培地に添加することによって、MCF-7-1A4細胞のTAMに対する感受性に影響を与えるか否かを検討したところ、MCF-7-UGT1A4細胞のTAM耐性能は抑制され、TAMの添加によって増殖は抑制された。そこでさらに、MCF-7-UGT1A4細胞を用いて、TAMの細胞内動態について検討した。その結果、MCF-7-UGT1A4細胞では、野生型MCF-7細胞と比較し、細胞内TAM濃度は低下していた。そして、同条件下においてTAM代謝物の同定を行ったところ、MCF-7-UGT1A4細胞においてTAM N^+-glucuronideが生成していた。また、このTAM N^+-glucuronideはすみやかに細胞外へ排泄されていた。これらの結果から、ヒト乳癌由来のMCF-7細胞はUGT1A4を発現することによって、TAMをグルクロン抱合し、抱合体が細胞外に排泄されることによって、TAMに対して耐性を示すようになることが明らかになった。
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