平成17年度は、分子インプリントポリマーを人工膜上に固定化した新規味覚センサの開発を最終目的としたが、分子インプリントポリマーの作成に先立ち、苦味アミノ酸のモデル化合物であり、分子インプリントの基質であるBCAA(分岐鎖アミノ酸)を選択してそれらの服用感に関する基礎的検討を行った(研究発表1参照)。わが国の代表的な経腸栄養剤を対象に、経口摂取した場合の服用感およびフレーバー添加による味の変化について、等価濃度試験法やSD法(Semantic Differential Method)などの官能試験を用いて定量的な検討を行った。経腸栄養剤は半消化態栄養剤では比較的服用感は良好であったが、他のグループの製品では服用感の悪いことが示された。SD法の結果を因子分析すると経腸栄養剤の服用感は、「服用しやすさ」と「しつこさ」の2因子から構成されていることが検証された。この2因子に与える要因については、「服用しやすさ」には甘味・酸味が、「しつこさ」には苦味が重要な役割を果たしていることが示唆された。 次に、本研究ではキニーネの代わりにキニーネの構造に類似のシンコニジン(CD)をテンプレート分子とし、機能性モノマーにメタアクリル酸(MAA)を、架橋剤にethylene glycol dimethacrylate(EDMA)を用いてMIPを調製した。始めにテンプレート分子と機能性モノマーとの複合体を形成させた。次にこの複合体に架橋剤を加え重合反応を行うことによりポリマーが生じる。このポリマーからテンプレート分子を抽出除去することにより"特異的結合部位"が形成された。官能試験に使用したアミノ酸関連の試験物質を1〜40mM含有した移動相を調製し、CDをテンプレートした分子インプリントポリマーを用いてアフィニティクロマトグラフィを行い、キニーネの保持係数を求めた。試験物質の濃度に対して保持係数の逆数をプロットした回帰式の傾きより会合定数を算出し相互作用の指標とした。会合定数の大きさは、L-Orn=L-Arg>L-Ctr≫L-Lysとなり、その結果はヒト官能試験における結果とほぼ一致し、効果の指標になり得ることが示唆された。
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