研究概要 |
遺伝子治療の安全性確保上、増殖性ウイルスの混入は非常に重要な問題である。増殖性アデノウイルス(RCA)を全く含まないアデノウイルスベクター(AdV)の開発は困難であり、遺伝子治療を受けた患者の臨床検体中のAdV及びRCAの高感度な検出が望まれている。本研究では、我々が開発した感染性PCR法によるRCA検出法を臨床検体へ適用するための方法の確立を目指す。また、AdVを用いた遺伝子治療の実施に必要とされるAdVの環境への放出の高感度検出系の開発と臨床検体への適用の妥当性を検討する。 感染性PCR法はウイルスを指向性細胞に感染・増幅させた後、リアルタイム定量PCRにより高感度検出法する方法であるが、臨床検体中のRCA及びAdVは種々の妨害物質のために効率よく感染させることが困難である。そこで、今年度はウイルスを効率よく細胞に感染させる方法を検討した。まず、ポリエチレンイミン(PEI)結合磁気ビーズにウイルスが吸着することを利用した感染系の確立を検討した。我々が開発したPEI磁気ビーズとAdVと混合後、磁気プレート上で細胞に強制感染させたところ、通常の感染と比較して100倍以上の感染性の増強が認められた。我々と同時期に開発された市販のPEI磁気ビーズであるCombiMag, ViroMagを用いても同様の結果が得られた。一方、抗ウイルス抗体とProtein G磁気ビーズを用いた強制感染系の確立も検討したが、アデノウイルスのヘキソンに対するポリクローナル抗体を用いた系では感染性は通常の2倍程度までの増強にとどまった。 また、AdVの高感度検出法として、HEK293細胞に感染させ、増殖したウイルスを回収して定量PCR法により検出する感染性PCR法を確立した。今後、PEI磁気ビーズを用いた強制感染系を用いて臨床検体中のRCA,AdVを測定するための条件検討を行う予定である。
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