薬物代謝酵素活性の個体差の原因の一つとして遺伝子多型が注目されているが、3'-非翻訳領域の多型に着目した研究は少ない。本研究では、グルクロン酸抱合酵素UGT1A1を対象に、3'-非翻訳領域の遺伝子多型のmRNA安定性・代謝能等への影響を解析することを目的とする。本年度はUGT1A1全長cDNAのクローニング及び変異体発現プラスミドの作成を行った。 1.全長cDNAクローニング 最近の研究により、mRNAはその5'末端と3'末端が結合したループ構造で蛋白質翻訳を行うことが報告されている。実際のin vivoでの状態に則した条件で解析を行うため、本研究では転写開始よりpoly Aまでを含めた全長のUGT1A1 cDNAをクローニングした。具体的には、肝臓のpolyA RNAにつきoligo dTプライマーを用いて逆転写後に両端にタグ配列をつけ、本タグ配列およびcDNA特異的なプライマーを用いて増幅することにより5'-RACEおよび3'-RACEを行った。シーケンシングにより確認した配列をゲノムDNAの参照配列(AF297093)と比較して5'末および3'末が最も長いクローンを選択した。cDNA全長が増幅できるプライマーを設計して増幅し、哺乳動物発現用CMVプロモーターを有するベクターに挿入した。大腸菌を形質転換後、クローンよりプラスミドを調製し、全cDNA配列の確認を行い、人為的な変異が導入されていないことを確認した。 2.変異導入 クローニングしたcDNAに、日本人由来検体において既に同定していた3'-非翻訳領域の遺伝子多型3種を、個別にまたは同時に変異導入した。具体的には、変異を持つプライマーを用いた方法により変異を導入し、大腸菌を形質転換後、クローンよりプラスミドを調製し、全cDNA配列の確認を行い、目的とする変異の導入および目的の場所以外に変異が導入されていないことを確認した。
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