昨年度は、UGT1A1の3^'-非翻訳領域で見いだされた、3種の連鎖する遺伝子多型を同時に有する変異型発現プラスミドに関し、培養細胞における発現を確認したが、今年度はその解析を行った。 1.mRNM発現レベルおよび安定性の解析 野生型及び変異型発現プラスミドを、COS-1細胞及びHepG2細胞にトランスフェクトした。24時間後にアクチノマイシンD処理を行って転写を止め、さらに経時的に細胞より全RNA画分を回収し、リアルタイムPCR法にてUGT1A1 mRNAの定量を行い、野生型と変異型の場合を比較した。特にCOS-1細胞において、変異型では発現レベルが低くなる傾向が見られたが、有意な差は認められなかった。また、安定性には全く差が見られなかった。 2.蛋白質発現レベル及び安定性の解析 野生型及び変異型発現プラスミドを、HepG2細胞にトランスフェクトした。24時間後にアクチノマイシンD処理を行って転写を止め、さらに一定時間後に細胞よりミクロソーム画分を回収し、イムノプロット法にてUGT1A1蛋白の定量を行い、野生型と変異型の場合を比較した。変異型で発現レベルが低い傾向が得られたが、安定性の差は認められなかった。 3.microRNAによるUGT1A1発現レベルの制御と多型との関連 データベース上で当該3種の遺伝子多型部位に結合するmicroRNAを検索したが、3多型のいずれかが、seed部位への結合に関与するmicroRNAは見いだされなかった。 昨年度、当該3種の連鎖する遺伝子多型を有する#IBハプロタイプと5^'-転写制御領域に存在する#60ハプロタイプを同時に有する場合、in vivoで総ビリルビン値が有意に高く、UGT1A1酵素活性の低下が示唆されたが、上記3^'-非翻訳領域に存在する3種の連鎖する遺伝子多型のみでは、in vivo同様、in vitroでも機能影響は弱いことが示唆された。
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