脂肪酸結合タンパク分子(Fatty Acid Binding Protein:以下FABPとする)ファミリーは、脂肪酸、エイコサノイドなどに結合能を有し、細胞内機能としては、リガンドの細胞内動態や核内受容体への情報伝達の制御などが考えられている。申請者らは本期間中に、免疫系細胞におけるFABP分子の組織発現解析と遺伝子ノックアウトマウスの表現型解析を施行し、以下の結果を得た。 1 表皮型FABP(E-FABP)および脂肪細胞型FABP(A-FABP)が、卵巣のマクロファージおよび顆粒細胞に特異的な発現を示すこと(J Mol Histol印刷中)。 2 樹状細胞(DC)に発現するE-FABPがDCの主要なサイトカインであるIL-12の転写調節に、MAPキナーゼ等のシグナル制御を介して関与すること(投稿中)。 3 A-FABPがデキサメサゾン投与後のリンパ球で発現が増強し、リンパ球の細胞死過程で細胞質から核への局在変化を示すこと(Mol Cell Biochem印刷中)。 4 LPSにて誘導した肺損傷モデルで、損傷早期に肝臓型FABPの血清中の上昇が観察されること(Eur J Lipid Sci Technol)。 以上の結果は、免疫系細胞に多様な発現を示すFABP分子ファミリーが組織・細胞特異的に炎症反応や細胞死の過程に機能的関与を示すことを示唆している。今後さらに細胞内制御機構の詳細について検討を加えていきたい。
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