研究概要 |
脂肪酸結合タンパク分子ファミリー(FABPs)は、水に不溶な脂肪酸と結合し、細胞内での動きと機能を制御する。本研究の目的は、FABP分子の免疫系細胞での機能に焦点をあて、遺伝子ノックアウトマウスに対する表現型解析と、形態学的組織発現解析を軸に検証することである。申請者らが本支援のもとに施行した研究から得た成果は、以下の通りである。 1 E-FABPノックアウトマウスの樹状細胞や肥満細胞では、内毒素の刺激によって産生されるIL-12やTNF-αの産生が、それぞれ亢進あるいは低下し、シグナル分子であるMAPキナーゼやNFkBの活性変化が認められること(Kitanaka et al. BBRC,2006)。さらにE-FABPノックアウトマウスが急性炎症に対して脆弱であること(投稿中>。 2 脂肪細胞型FABP(A-FABP)が、閉鎖卵胞内顆粒細胞やリンパ球の細胞死過程で、核内での発現増強を示し、細胞死の制御に深く関わる可能性があること(Abdelwahab et al. Mol Cell Biochem,2007。 3 脳型FABP(B-FABP)ノックアウトマウスのアストロサイトでは、n-3系脂肪酸の取り込みが低下し、細胞の分裂能低下が招来されていること(投稿準備中)。 以上の結果は、FABP分子群がエネルギー産生や膜脂質の合成などの旧来提示されていた機能にとどまらない、多彩な細胞機能に免疫系細胞において、広く関与することを示すものである。
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