本研究の研究代表者らは、プロトカドヘリン-10(Pcdh10)およびその他のカドヘリンについて、ゼブラフィッシュ胚発生における役割を調べた。ゼブラフィッシュのPcdh10bは沿軸中胚葉と体節に発現し、体節の成熟とともに消失した。Pcdh10bに対するアンチセンスMorpholinoまたはPcdh10bのドミナントネガティブ体の使用により、沿軸領域や体節の形成が阻害された。Pcdh10bは沿軸中胚葉・体節の形態形成において重要な役割を果たしていると考えられた。プロトカドヘリン-8(Pcdh8)も、沿軸中胚葉に発現し体軸形成に関与していることが知られている。Pcdh10bの発現はPcdh8より長時間にわたって沿軸中胚葉および体節内に続いていた。向軸細胞にはPcdh8だけが発現した。Pcdh10bは松果体、中枢神経系、耳胞などにも発現していた。以上を原著論文として報告した。Cdh6は前腎の糸球体および前腎管に発現していた。アンチセンスMorpholinoを用いてCdh6をノックダウンすると、糸球体と前腎管の発生に異常が現れ、後期胚では水腫が現れた。尿細管上皮細胞の配列には乱れが生じていた。アンチセンスMorpholinoのこれらの効果は、Cdh6の合成RNAによってレスキューされた。このことから、Cdh6が前腎の糸球体と尿細管の形成に重要な役割を果たしていると結論した。Cdh6についての結果も原著論文として発表した。Pcdh18は中枢神経系、咽頭弓、消化管原基などに発現していた。発現を詳細に検討し、その結果を学会で発表した。近く原著論文として発表を予定している。今後は、Pcdh8類縁のプロトカドヘリンについて解析を続ける予定である。これにより、胚発生におけるプロトカドヘリンの機能の理解が進むと期待している。
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