研究概要 |
セルトリ細胞・精子細胞間の特殊接合装置の機能を解明するためにこの装置に発現していると言われているネクチンおよびアファジンをそれぞれの抗体を作用させて失活させ、その分子の機能を止め、その結果として何が起こるかを調べた。 ネクチンにはネクチン1,2,3,4があり、セルトリ細胞にはネクチン2が発現しており(Bouchard et al.,2000)、精子細胞にはネクチン3が発現している(Ozaki-Kuroda et al.,2003)。両ネクチンともセルトリ細胞・精子細胞間の特殊接合装置に局在しており、この部におけるセルトリ細胞と精子細胞の結合を強固なものにしている。この装置の生物学的な機能の解明が本研究の目的である。 本年度では昨年度の抗ネクチン2抗体の精細管内腔への顕微注入に続き、抗ネクチン3抗体も注入した。その結果、抗ネクチン2抗体の注入結果と同様に、接合装置のアクチン線維層の消失が見られた。精子細胞のネクチン3を抗ネクチン3抗体で失活したのに、その影響は精子細胞でなく、セルトリ細胞にアクチン線維層の消失、すなわち抗ネクチン2抗体を作用させた場合と同じ影響が出た。これは、特殊接合装置ではネクチン2とネクチン3がヘテロトランスダイマーで結合しており(Takai and Nakanishi,2003)、精子細胞のネクチン3が抗ネクチン3抗体で失活し、それがヘテロトランスダイマーを経てセルトリ細胞のネクチン2が変化を受け、その結果セルトリ細胞内のアファジンも影響され、セルトリ細胞内のアクチン線維層が消失したと思われた。 このアクチン線維層が消失することにより特殊接合装置の機能が失われ、発達途上の精子細胞が精上皮からはがれ、精細管内腔に現れたことにより、この特殊接合装置の機能は未熟精子細胞を精上皮に保持することであると思われる。このことはマウスに各種の女性ホルモンを投与して得られた結果に対応する(Toyama et al.,2001; Anahara et al.,2006)。
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