1)ラット舌下腺に発現する新規蛋白質:ラット舌下腺に特異的に発現する遺伝子をクローニングし、そのコードする蛋白質への抗体を作成した。この蛋白質は動物L型レクチンの一種であるヒトERGLと高いホモロジーを有する膜蛋白質であり、Sublingual acinar membrane protein(SLAMP)と名付けた。SLAMPは舌下腺の腺房細胞において主に小胞体-ゴルジ中間区画(ERGIC)の膜に局在し、粘液成分の形成や輸送、分泌に関与することが示唆された。2)顎下腺導管系の分化におけるMeninの発現と局在:Meninは、転写因子JunDと結合してその活性を抑制する核内蛋白質である。マウス顎下腺におけるmeninの発現は、雄より雌ではるかに高かった。Meninの免疫反応は介在部導管および雌の線条部導管遠位部の細胞に認められ、雄の顆粒性導管(GCT)細胞には存在しなかった。雄の思春期および雌へのアンドロゲン投与で線条部導管細胞が顆粒性導管細胞に分化する際に、核のmeninが消失した。JunDとmeninの発現と局在のパターンは一致し、両者の複合体が顎下腺導管系の分化を制御する可能性が示唆された。3)アンドロゲンにより発現を抑制される顎下腺の新規蛋白質:マウス顎下腺より新規の遺伝子をクローニングした。そのコードする蛋白質はラット顎下腺のグルタミン/グルタミン酸高含有蛋白質(GRP)と相同性があり、Submandibular androgen-repressive protein(SMARP)と名付けた。SMARPのmRNAはマウスの顎下腺と涙腺の腺房に発現し、顎下腺では雄より雌で、逆に涙腺では雌より雄ではるかに強く発現した。テストステロンの投与実験により、mRNA発現は顎下腺ではアンドロゲンにより抑制され、逆に涙腺では促進されることがわかった。
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