これまでの研究により、細胞膜の脂質構成は均一無構造ではなく、脂質ラフトに代表される多様な膜マイクロドメインのモザイク状集合体であることが明らかになってきている。しかし、細胞外側の脂質構成の変化に対応する細胞質側の脂質構成や、それに応じたシグナル伝達分子の局在様式の検討はまだ十分にはなされていない。 本研究の目的は脂質ラフトを同定し、その細胞質側に局在するシグナル伝達分子の局在を超微形態学的に検討することであり、平成18年度には以下の研究成果が得られた。 免疫学的シナプス形成時の脂質ラフトマーカーの局在変化の検討: Jurkat細胞の表面を4℃で5nm-コロイド金標識ライセニンおよび10nm-コロイド金標識コレラトキシンで標識し、抗CD3抗体を塗布したカバースリップとインキュベートすることで、接着面に免疫学的シナプスを形成させることができた。蛍光顕微鏡を用いた検討では、4℃で接着面全体にランダムに配列していた脂質マーカーが、37℃でシナプス形成を惹起したときには接着面の周辺に集積する傾向があることを確認した。これらの試料をグルタールアルデヒド・四酸化オスミウムで二重固定し、型どおりエポン包埋試料を作成した。超薄切切片を透過型電子顕微鏡を用いて観察し、同様の局在変化が超微形態学的にも確認されたが、ライセニンとコレラトキシンでは分布様式に違いかあることを発見した。平成19年度は、同様の実験系と急速凍結・凍結置換固定法を用いていろいろな脂質マーカーとシグナル伝達分子や接着分子の局在の同時観察を行う予定である。
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