研究概要 |
1.マウスES細胞を用いて、安定して「腸管様構造」を形成させる方法を確立し、その詳細を欧文で分担執筆した(研究発表の項参照)。 2.腸管発生で必要とされる転写因子(GATA4,HNF3β/Foxa2,Sox17 Id2)が、腸管様構造の形成過程でも発現し、その発現パターンはin vivoと類似していることを見出して、原著論文発表した(研究発表の項参照)。 3.腸管様構造の形成過程を詳細に検討し、マウス胎生期腸管の器官形成と比較した。多くの類似点と共に、相違点も認められた。特に、血管が構築されないこと。壁内神経説細胞が少ないことがわかった。さらに、形成された腸管様構造がマウス消化管のどの部位に相当するかを検討した結果、胃よりも腸(小腸、大腸)に相当することを明らかにした。未分化な腸管様構造を免疫不全マウスの腎漿膜下に移植して、その発生能、腫瘍形成能を検討した。その結果、未成熟な形成途上にある腸管様構造を移植しても、腎漿膜下で成熟した腸管様構造が分化することを認めた。従って、ES細胞由来の腸管様構造は早期にその発生運命が決定されていること。腫瘍形成は認められないこともわかった。これらの結果をまとめて原著論文として投稿している。 4.腸管様構造をin vitroの実験系として腸管発生研究に用いることを試みた。腸管平滑筋の分化、ペースメーカー細胞である「カハールの介在細胞」の発生についての研究はin vivoでの研究が難しくこれまでのところ非常に少ない。そこでES細胞による腸管様構造形成のin vitroの系を用いてBMPシグナル、PDGFシグナルが平滑筋の分化に関与することを証明しつつある。これまでに明らかになったことを「第4回国際ICC学会」で口頭発表した。来年度も実験を継続してデーターを増やし、原著論文として発表する予定である。
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