研究概要 |
研究代表者は、老化細胞においてリン酸化修飾が亢進されるp53の376番目セリンに対する抗体を作成した。現在、抗リン酸化セリン376-p53抗体を用いて、リン酸化p53の細胞質局在を解析中である。さらにS1-1分子のZドメイン及びS1-1p130のXドメインに対する抗体も作成した。上述の抗S1-1抗体及び抗PMLアイソフォーム抗体を用いて、ヒト正常細胞及び腫瘍細胞における局在、並びに発現レベルを解析した。両細胞において、S1-1p110分子の細胞核局在が明らかであったが、S1-1ヌクレオボディを認めなかった。またP130X抗体は顕著な細胞質局在を示した。正常細胞においては、PMLアイソフォーム2,4,5,6は核ヌクレオボディを形成していたが、HeLa細胞において顕著な細胞質局在が観察された。PML3に関して、両細胞とも中心体への局在を示した。正常細胞及びHeLaのPML2,3,5,6の蛋白レベルは同様であった。しかし、正常細胞に比べて、HeLa細胞のPML4蛋白レベルは極めて低かった。正常細胞と比較して、HeLa細胞におけるS1-1p130の発現は極めて高く、HeLa細胞の高い増殖能との関連が示唆される。HeLa細胞では、腫瘍抑制蛋白PMLの核ヌクレオボディ形成が阻害されることが明らかになった。 S1-1ヌクレオボディはスプライシング因子SC35がつくるヌクレオボディに隣接・接続して存在していた。またRNAスプライシング阻害剤:FR901464の処理により、S1-1ヌクレオボディはダイナミックに変化し、大きくなって数を減らした。さらに転写阻害剤Act Dにより同様な変化が認められ、splicingを抑制されたpre-mRNAはS1-1 bodyに局在することが示唆された。今後、S1-1p130蛋白質の細胞増殖制御並びにスプライシングにおける機能を明らかにすることが重要と考えている。
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