研究概要 |
直接蛍光標識した抗S1-1-Z及び抗S1-1-p130抗体、並びに抗PMLアイソフォーム抗体を使用し、培養ヒト正常細胞(TIG3S)、腫瘍細胞、ラット及びヒト正常組織におけるS1-1及びPMLヌクレオボディの動態を観察した。若いTIG3S細胞では、S1-1ヌクレオボディが稀に観察され、PML2,4,5,6のヌクレオボディも顕著に観察された。さらにS1-1及びPML6ヌクレオボディの共局在が確認された。HeLa細胞では、S1-1ヌクレオボディは殆ど観察されず、S1-1及びPMLの顕著な細胞質局在、主にPML2及びPML6のヌクレオボディ、稀にPML4及びPML5のヌクレオボディが観察された。分裂の盛んな若いTIG3SやHeLa細胞では、S1-1ヌクレオボディが稀に存在した。またHeLa及び若いTIG3S細胞のS1-1p110蛋白質レベルは非常に低く、逆にS1-1p130蛋白質は高レベルであった。さらにHeLa細胞のS1-1p130レベルは、TIG3S細胞の3倍程も高レベルであった。PML及びS1-1(RBM10)の各アイソフォームのアミノ酸配列中には、多数のプロテインキナーゼC(PKC)及びカゼインキナーゼ2(CK2)のリン酸化部位が存在する。そのため、カゼインキナーゼ(CK2)の活性が強いHeLa細胞では、CK2-リン酸化修飾(PMLの517番目のセリンS^<517>)を受けたPML蛋白がプロテアソームで分解される。しかしながら、S1-1p130(RBM10 variant-1)は非常に安定であった。PKC及びCK2阻害剤を投与したHeLa及びTIG3S細胞では、S1-1ヌクレオボディの発達が認められ、リン酸化修飾によりS1-1ヌクレオボディの構築が抑制されることが示唆された。PKCとCK2阻害剤により、HeLa及びTIG3S細胞の細胞死が誘導され、それらの増殖も強く阻害された。
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