1.リソソーム酵素の選別輸送を担うマンノース6リン酸受容体(M6PR)は、トランスゴルジネットワーク(TGN)、エンドソーム、細胞膜間を小胞輸送により移動している。本研究ではM6PRの細胞質外ドメインが同受容体輸送に与える影響について以下の結論を得た。 (1)GFP-M6PRのタイムラプス観察、FRAP (fluorescence recovery after photobleaching)解析およびクロロキン投与実験により、M6PRの細胞質外ドメインは、エンドソームにおける同受容体の停留、あるいはTGN由来の輸送キャリアーとエンドソームの融合を安定化させる機能を有することが示唆された。 (2)U18666Aの投与実験およびI-cell病患者由来の線維芽細胞を用いた実験により、リソソーム酵素との結合に依存する輸送過程の存在が示唆された。この事は同薬剤によりM6PRの新たな輸送過程を同定できることを意味し、今後の研究に活用できる。 2.M6PRの輸送動態を制御するクラスリンアダプタータンパク質のGGAの機能を探った。RNAi実験によりGGA2の発現を特異的に低下させても、ドミナントネガティブ実験により機能を阻害してもM6PRの局在変化は見られなかった。しかしRNAiによる発現低下細胞株を作製したところ、リソソーム酵素のカテプシンDが細胞外へミスソートされていた。このことはリソソーム酵素輸送異常が必ずしもM6PR局在変化に反映されるとは限らないことを示唆する。今後、GGAが関与するM6PRの輸送過程を同定する予定である。
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