研究概要 |
Pituitary Adenylate Cyclase-Activating Polypeptide (PACAP)は、中枢神経の発達調節・神経保護・血管拡張・内分泌の調節など、様々な作用を持つペプチドとして知られている。私たちは、PACAP、特異的レセプターPAC1-Rが胸腺上皮細胞に発現することや放射線障害がその発現に影響を与えることを報告してきた。 17年度は、特にPACAPのレセプターであるPAC1-Rが胸腺のどのような場所のどのような細胞に局在しているのかを解析した。ラット胸腺では、PAC1-Rは髄質の胸腺上皮細胞のうちintermediate typeの上皮細胞に発現しており、PACAP陽性胸腺細胞との細胞間相互作用の際に重要な役割を担っていると考えられた。PAC1-R陽性細胞はラットと同様、アカゲザル胸腺の髄質に見られた。他の動物種の胸腺にもPAC1-R陽性細胞が観察されたため、ラット以外の動物の胸腺においてもPACAPおよびそのレセプターを持つ細胞が重要な働きをしていることが示唆された。 また、胸腺およびT細胞を傷害すると言われているTCDD(2,3,7,8-四塩化ジベンゾパラジオキシン)の投与で、胸腺および胸腺中のPAC1-R陽性細胞がどのような影響を受けるのかを検討した。TCDDを暴露されたアカゲザル及びその児(経胎盤および授乳によって暴露)の胸腺には正常の胸腺と違う所見を示すものがあり、それらの胸腺ではPAC1-Rの発現が正常像とは異なっていた。 この他にも胸腺についてRT-PCR in situによる解析、共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析などを行っており、次年度以降に発表予定である。
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