研究概要 |
Pituitary Adenylate Cyclase Activating Polypeptide (PACAP)は、中枢神経の発達調節・神経保護・血管拡張・内分泌の調節など、様々な作用を持っペプチドとして知られている。私たちはPACAPの免疫系への関与を解析し、PACAP特異的レセプターPAC1-Rが胸腺上皮細胞にも発現することを報告してきた。ラット胸腺では、PAC1-Rは髄質の胸腺上皮細胞のうちintermediate typeの上皮細胞に発現しており、PACAP陽性胸腺細胞との細胞間相互作用の際に重要な役割を担っていると考えられた。また、その発現は放射線照射によって傷害を受けた。 18年度は、各種動物についてPAC1-R陽性細胞の発現を解析するとともに環境ホルモン投与の影響を検討した。PAC1-R陽性細胞はラットと同様、アカゲザル胸腺の髄質に見られ(Tokuda et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,2006)、他の動物種の胸腺にもPAC1-R陽性細胞が観察された。また中枢・免疫系・内分泌臓器以外でもこのPAC1-Rが発現していることが示唆された。 一方、共同研究者の塩田らは遅発性神経細胞死防御の機構とPACAPの果たす役割の解明を行い、1)直接神経細胞に作用してMAP kinaseを介してミトコンドリアからのチトクロームCの細胞質内への分泌を抑制すること2)間接的な作用としてはグリア細胞(星状膠細胞)へ作用してIL-6の分泌を促し、それが神経細胞に作用して上記と同じような機構で細胞質内へのチトクロームCの分泌を抑制すること(PNAS 2006,他)を発表した。その他の実験結果を合わせ、PACAPは直接もしくはサイトカインなどの液性因子を介して、様々な臓器について細胞間相互作用に関わることが示唆された。
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