本年度に行った研究によって、以下のような研究成果が得られた。 1.平成17年度の科学研究費(基盤研究C)の補助を受けて行った研究で、laminin-1のペプチドYIGSRは67kD laminin receptor (67LR)の仲介で、脊髄背側部による脊髄神経節(DRG)軸索の誘引作用を増強することがわかった。そこで、私たちはニワトリの67LR遺伝子を新たにクローニングし、in situ hybridization法を用いて、ニワトリ胚におけるその発現様式を解析した。現在この知見を盛り込み、論文投稿準備中である。 2.軸索誘引因子netrin-1は、発生初期のニワトリ胚脊髄背側部に発現が見られ、脊髄背側部由来の軸索誘引因子の候補分子の1つとして考えられる。そこで、HEK293細胞にnetrin-1を一過性に発現させ、その細胞塊とDRGをコラーゲンゲル中で共培養することで、その軸索誘引活性の有無を検討した。その結果、netrin-1は軸索誘引効果をもたず、脊髄背側部由来の軸索誘引作用に関与しないことが判明した。 3.脊髄背側部由来の軸索誘引因子の実体解明にあたり、レーザーマイクロダイセクション法とcDNAマイクロアレイを用いた領域特異的発現遺伝子のスクリーニングを進めている。発生初期マウス胚のエントリーゾーンを含む脊髄背側部・蓋板・腹側部各々から微小切片を回収し、cDNAの調製に成功した。現在、これらのcDNAを用いてcDNAマイクロアレイを行い、統計処理によって脊髄背側部に特異的に発現する候補遺伝子をスクリーニング中である。今後、得られた遺伝子産物の発現をin situ hybridization法で確かめるとともに、2と同様な方法でその遺伝子産物の軸索誘引活性を解析する予定である。
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