研究概要 |
これまでの我々の実験結果から、腹部内臓器官におけるステロイド産生には、動物種による種差が存在し、ヒトを含む大部分の哺乳動物では、脾臓を含むリンパ組織が腹部内臓器官におけるエストロゲン産生の主要な部位であり、リンパ組織内あるいはリンパ組織-肝臓連関を介して生体制御を行っているのではないかとう仮説を立てた。そこで、本年度はまず最初に、実験動物としてよく用いられているラットの腹部内臓器官において、エストロゲンを中心とするステロイド合成・分泌がリンパ組織で行われていることを、ステロイド代謝酵素の発現という観点から検索した。リンパ組織は、胸腺、脾臓、リンパ節、回腸のパイエル板を対象として、各種のステロイド代謝酵素(aromatase,5α-reductase typel and 2,3α-hydroxysteroid dehydrogenase, P450scc等)に対する特異抗体を用いて、生後早期から成熟期に至る発達過程における酵素蛋白の発現を免疫組織化学的に調べた。その結果、各リンパ組織において、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、細網上皮細胞などの免疫反応に関与する各種細胞が、ステロイド代謝酵素を発現することを確認した。陽性細胞は、各ステロイド代謝酵素に特有であり、その局在および免疫反応性も各酵素で異なった。また、陽性反応は、成熟期において上記の各種細胞に認められたが、生後早期の段階からすでに免疫反応は発現していた。現在、各ステロイド代謝酵素を発現する細胞の発達過程における変化について、検討しているところである。
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