本研究の目的は、下垂体の多ホルモン分泌細胞プロファイルを得、その生理的意義について検討することである。本年度は、下垂体細胞のLHβ蛋白質ならびにmRNA発現とGH等ホルモン発現にかかわる転写因子Pit-1について注目し、その細胞レベルでの共存につき、in situハイブリダーイゼーション法、免疫染色を蛍光二重標識によって行い検討した。 成熟雌ラット下垂体前葉より細胞を分離、カバーグラス上でホルムアルデヒド固定し、実験に用いた。mRNA ISHには、DIG標識cRNAをプローブとして用い、HRP標識抗DIG抗体を介して、チラミド増感法にて蛍光標識した。免疫細胞染色は特異抗体の局在を蛍光標識二次抗体で可視化した。反応の特異性は、免疫染色では抗原添加による競合的阻害により、mRNA ISHでは未標識cRNAの添加による阻害実験により確認した。 LHβmRNAとPit-1蛋白質、LHβ蛋白質とPit-1蛋白質のいずれの組み合わせにおいても共陽性細胞が検出された。ただし、その出現頻度は低く、LHβ陽性細胞のうちの最大でも3%未満程度であった。頻度は、雌ラット正常性周期では、発情前期で高く、発情間期で低い傾向があった。このことは、昨年度の成果として報告したLHβ/GH共陽性細胞の存在を、別の角度から明らかにしたものである。 LHβ/Pit-1共陽性細胞の頻度は、LHβ/GH共陽性細胞の頻度よりも低く、その一部の細胞を検出している可能性がある。
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