1.ジクワットのラット胎子動脈管に及ぼす影響を検討するために、母体へジクワットを投与し、胎子動脈管の変化を急速全身凍結法にて観察した。母体へのジクワット(0.5、2および7mg/kg)投与は、剖検日時を妊娠21日目の午後1時として、この剖検時間より1、3、6、24時間前に皮下投与によって行った。その結果、ジクワット2mg/kgあるいは7mg/kgを剖検前3時間あるいは6時間に投与した群において対照群(生理的食塩水投与群)と比較して有意な動脈管の収縮がみられた。観察されたジクワットによる胎子動脈管収縮は用量依存的な変化であった。また、両投与群ともに剖検前24時間投与では、動脈管が再び対照群と同程度に拡張していることからジクワットによる動脈管収縮は、一旦収縮を引き起こした後、時間の経過とともに回復するという可逆的な変化であった。 2.インドメタシンに代表される抗炎症薬の動脈管収縮作用機序はシクロオキシゲナーゼ活性阻害によるプロスタグランジン(PG)合成阻害と考えられていることから、ジクワットがシクロオキシゲナーゼ活性に及ぼす影響をin vitroで検討した。アラキドン酸を基質として、インドメタシン(陽性対照)あるいはジクワット存在下で、PGエンドペルオキシドシンセターゼ(シクロオキシゲナーゼおよびヒドロペルオキシダーゼ)を含むヒツジ精嚢ミクロソームを作用させ、PGG_2およびPGH_2生成量を測定したところ、インドメタシン添加群ではPGG_2およびPGH_2の生成が著しく阻害されたのに対して、ジクワット添加群ではこれらのPGsの生成は阻害されず、ジクワットはPGエンドペルオキシドシンセターゼ阻害作用を持たないことが明らかとなった。従って、ジクワットの動脈管収縮機序はインドメタシンに代表される抗炎症薬における収縮作用機序とは異なることが示唆された。
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