カンガルー科の動物の中で大型カンガルーのみが水平置換を行うことについて歯牙との関連を調べてみた。 Macropus rufus(レッドカンガルー)53頭、Macropus fuliginosus(グレーカンガルー)15頭、Petrogale xanthopus(リングテールロックワラビー)33頭、Petrogale lateralis(ブラックフッティドロックワラビー)15頭、Thylogale billaridieri(ルーフスワラビー)13頭、Wallabia bicolor(スワンプワラビー)16頭、Bettongia lesuer(バロウイングベトング)24頭を用いた。このうちレッドカンガルーとグレーカンガルーは水平置換を行う。これら大型カンガルーは草原の草を食べており機の新芽や虫を食べる他のカンガルー科の動物に比べて比較的硬いものを食べていることになる。標本の右第2小臼歯(Bettongiaは第2小臼歯が無いので第1小臼歯)と右第1から第4大臼歯の近遠心径を計測した。結果を相対的に比較する為に第2小臼歯と第一大臼歯、第3大臼歯と第4大臼歯の相対的大きさも比較した。また大臼歯の大きさの回帰直線を最小二乗法で求めた。 バロウイングベトングは小臼歯が相対的にも絶対的にも最大であった。水平置換を行う大型カンガルーは小臼歯が大臼歯より小さかった。大臼歯の回帰直線の傾きは一番硬いものを食べる大型カンガルーがもっとも大きく一番やわらかいものを食べるバロウイングベトングが一番柔らかく、硬いもを食べる方が後ろの臼歯が大きくなる傾向を示した。バロウイングベトングの最大の大臼歯は第2大臼歯であった。
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