糖とインスリンに着目し、腎血流調節作用と高血圧発症機序を明らかにした。麻酔下ラットの腎局所血流の反応をレーザードップラー法で検討した。50%ブドウ糖の急性静脈内投与により血糖は上昇し腎髄質血流が約20%減少した。この反応は活性酸素消去剤Tironの腎髄質間質内前投与により消失した。一方、50%ブドウ糖の静脈内投与後にインスリンを腎髄質間質内投与しても腎髄質血流は変化しなかった。また50%ブドウ糖を直接腎髄質間質に投与しても腎髄質血流は低下した。したがって、血糖の上昇は腎髄質局所の酸化ストレスにより腎髄質血流を減少し、血圧を上昇させることが示唆された。次にDahl食塩感受性高血圧(DahlS)ラット、Dahl食塩非感受性高血圧(DahlR)ラットおよびSprague-Dawley(SD)ラットに10%ショ糖を飲水ボトルで2週間投与したところ、DahlSラットとDahlRラットでは投与1週より有意な血圧上昇がみられたが、SDラットでは2週にわたり有意な血圧上昇はみられなかった。DahlSラットの血圧上昇はアンジオテンシン受容体拮抗薬で抑制された。尿中の過酸化水素の排泄はDahlSラットとDahlRラットではショ糖投与後有意な増加があったが、SDラットではごく軽度に留まった。また、DahlSラットでの血圧上昇と尿中過酸化水素排泄の増加はNa-glucose cotransporter(SGLT)の阻害薬phlorizinの投与により抑制された。さらにPhlorizinの腎髄質間質投与は50%ブドウ糖の急性静脈内投与による髄質血流の低下を抑制した。以上のことから、ショ糖負荷による血糖上昇はレニン・アンジオテンシン系やSGLTを介して腎酸化ストレスを亢進し、腎髄質血流を減少、ナトリウムの再吸収を亢進し高血圧発症に関与していることが示唆された。
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