研究概要 |
ヒトを含む多くのほ乳類の心筋細胞において,緩徐活性型遅延整流性K^+チャネル(I_<Ks>)は活動電位再分極過程に必須の電流系であり,加えて,I_<Ks>はβ-受容体やα_1-受容体の刺激によっても増大し,交感神経による心臓電気活動の調節にも重要なはたらきをなしている.本年度(平成17年度)の研究では,α_1-受容体刺激によるI_<Ks>の増大反応に関わる細胞内機構について,酵素処理により単離したモルモット心房筋細胞にパッチクランプ法を適用して実験を行い,以下の結果を得た. 1.α_1-受容体刺激剤であるphenylephrineはI_<Ks>を濃度依存性に増大作用させ,最大反応は30μMにおいて得られた(97.0±12.0%,n=16). 2.プロテインキナーゼC(PKC)の阻害薬であるBisindolylmaleimide I(Bis I, 100nM)の存在下においても,phenylephrine(30μM)はI_<Ks>を38.1±12.1%(n=6)増大させた. 3.PKCεアイソフォームの選択的阻害ペプチドであるεV1-2(100nM)は,phenylephrine(30μM)によるI_<Ks>の増大反応をBis Iと同程度(46.4±9.2%増加,n=6)に抑制したが,classical PKCアイソフォーム(α,βI,βII,γ)の阻害ペプチド(βC2-4,100nM)は抑制作用をおよぼさなかった. これらの実験結果は,α_1-受容体刺激によるI_<Ks>の増大反応にPKCεアイソフォームの活性化に加えて,他の機構も関わっていることを示唆する.今後,α_1-受容体刺激に伴う細胞膜ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PIP_2)の減少が,I_<Ks>の増大反応に関わっている可能性について,電極内にPIP_2を負荷した実験等で検討を進めていく予定である.
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