研究課題
消化管平滑筋の自動運動の歩調とり機能における代謝機能の関与について調べるために、モルモット摘出胃幽門部平滑筋を用いて自発活動に及ぼす温度依存性について調べた。本実験に先立ち、平滑筋の細胞間伝達やいくつかの薬物反応についても調べた。摘出胃平滑筋は律動的に緩電位を発生していた。潅流液の温度をセ氏24度から42度までの範囲で変化させると、緩電位の頻度と立上速度は増加し、持続時間は短くなった。これらの変化は温度に対し直線的に変化した。緩電位の第2成分発生までの時間(潜時)は24〜32度の範囲では温度上昇により指数関数的に減少し、32度以上では変化しなかった。静止膜電位と緩電位の振幅は温度変化に影響されなかった。温度係数(Q_<10>値)を計算すると、頻度、持続時間、立ち上速度が高いQ_<10>値を示した。これらの温度効果は輪走筋、縦走筋、カハールの間質細胞から記録される活動のどれにも共通して観られた。温度よる波形の変化の中で、物質代謝による成分を明らかにするために、シアン化カリウム(KCN)存在下での温度変化の効果を観察した。KCN(3μM)は緩電位の頻度を著しく減少させたが、振幅や立上速度などは変化させなかった。KCN存在下では、温度変化に対し頻度の上昇効果だけが観られず、膜電位、振幅など他の因子はほとんど変化を受けなかった。これらの結果から、胃平滑筋の自発活動のなかで緩電位の発生頻度(あるいは歩調とり発生機序)が直接ミトコンドリアにおける物質代謝と関連していることがわかった。緩電位の立上速度や持続時間などはKCNで変化しなかったので、代謝機能以外の因子の関与が推定された。緩電位第2成分の発生にはイノシトール3リン酸(IP_3)が関与しているが、32度以上で温度変化に対し影響されなかったのは、IP_3代謝は32度付近ですでに十分に活性化されているためであろうと推定した。
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