シナプス前終末における神経分泌における開口放出や分泌小胞輸送、リサイクリング過程には、酵母から哺乳動物まで広く進化上保存されたSNARE連関タンパク質群が必須であると考えられている。近年、開口放出の際、融合細孔の形成には、SNAREコア複合体の形成が必須であると考えられている(SNARE仮説)。しかし、この分子複合体がどのように膜融合を引き起こすのか、その作用機序は未解明である。この問題の解決には生理的な環境下でSNARE複合体形成と融合細孔形成の因果関係や作用機序を解析し、明確化することが必須である。本研究は、昨年度に引き続き、2光子励起法を発展させ、蛍光タグ化タンパク質を発現させ、Ca2+濃度上昇、SNAREコア複合体の形成、融合細孔形成の間の時間的空間的な因果関係を、さらに明らかにすることを目的として実施した。本年度は神経分泌のモデル細胞として副腎髄質クロマフィン細胞を用い、SNAREコア複合体の構成分子であるSNAP25を蛍光タグ化し遺伝子導入した。蛍光抗体染色法により内在性のSNAP25同様に細胞膜に集積することが判った。そこで水溶性蛍光化デキストランを含む細胞外液で灌流し細胞外部空間をネガティブに染色し開口放出を可視化した。さらにケージドカルシウム試薬(NP-EGTA-AM体)を負荷させたクロマフィン細胞を紫外線閃光活性化させ、開口放出の際生じるΩ構造と蛍光タグ化SNAP25を同時を可視化する系を確立した。その結果、バキュオール型逐次開口放出という新規的な様式で分泌が生じていることを世界にさきがけ発見した。このバキュオール型逐次開口放出では、形成されたΩ構造が拡張していく。この拡張は内容物ゲルの膨潤によることを明らかにするとともに、この膨潤が開口放出を促進しているなどの生理学的意義が明らかになった。またSNAP25の側方拡散が逐次開口放出の進行に重要であった。
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