研究概要 |
1.家兎の延髄網様体ニューロンの活動を細胞外記録法にて安定して記録する方法を確立した。延髄は呼吸および血圧変動に伴い物理的に変位するため,容量結合に依存した従来のガラス微小電極法では安定した記録を維持することが難しい。そこで,電極の導体材料として直径7ミクロンのカーボンファイバーを用いたカーボンファイバー・ガラス複合電極を作成した。この電極によって,薬物投与が可能な多連ガラス管電極の利便性と金属微小電極に匹敵する優れた電気的特性を両立させることが可能となった。つぎに,汎用のデータ表示・解析ソフトウェアであるIgor Pro^<(TN)> (Wave Metrics社)のプログラミング機能を用いて,マルチユニット弁別システムを開発した。ユニット弁別は,閾値を越えたスパイク状波形に対して,山の高さ,山の前後の谷の深さ,山から谷までの振幅,時間,傾きなどの波形パラメータを用いて行った。これらのパラメータを任意の組み合わせで複数の2次元ないし3次元グラフ上にリアルタイムで表示し,各ユニットを視覚的に分離した。その結果,従来のウインドウ弁別器では分離困難なマルチユニットの弁別および信号対雑音比の低い信号の検出に成功した。 2.上記システムを用いてウレタン麻酔下の家兎延髄よりユニット記録を行い,脊髄に単シナプス性に投射し,かつ皮膚加温に応答するニューロンを探索した。その結果,延髄腹外側野および腹内側野の両部位において,皮膚加温にて活動が抑制されるニューロンの存在を確認することができた。これらのニューロンは,体温調節に関与する交感神経プレモーターニューロンである可能性が示唆される。今後,視索前野/前視床下部の温熱刺激に対する応答性,および皮膚血管反応など効果器レベルの応答との相関などをもとに,これらのニューロンがどのような体温調節反応と関連づけられているのかを検討していく予定である。
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