動物実験 正常ラットを3G環境に曝露すると摂食、飲水量ともに曝露開始後2日間はほぼ0となるが、内耳破壊ラットを同様に曝露すると摂食・飲水量ともに1G環境下に比較して減少を認めるものの1日目から0にはならなかった。また2日目からは摂食・飲水量ともに回復傾向を認めた。同様に体重減少も内耳破壊ラットの方が小さく、早期に回復を認めた。このことから、3G環境下におけるストレス感受性、行動制限には内耳前庭系が重要な役割を果たしていると考えられた。 ヒト実験 健康成人ならびにめまい、立ちくらみ経験成人について前庭機能検査 (温度眼振検査・自覚的視性垂直位試験) および仰臥位から60°頭高位に姿勢変化させたときの動脈血圧連続計測を行った。温度眼振検査で左右いずれかへの偏位が20%以上の被検者では、20%以下の被検者に比較して有意に起立時の動脈血圧低下を認めた。自覚的視性垂直位の異常値を認めた被検者は皆無であったが起立時の動脈血圧低下度は自覚的視性垂直位の左右差の程度に相関した。動脈血圧低下度は温度眼振検査の左右差にも相関傾向を認めたが、自覚的視性垂直位の左右差により高く相関した。また姿勢変化時平均5mmHg以上動脈血圧低下を認める被検者について0.1mA〜0.6mAの経皮的内耳電気刺激を行ったところ、体感閾値より0.1mA低い強度の刺激で起立時の血圧低下が改善された。このことから微弱な経皮的内耳電気刺激は起立性低血圧治療に応用できる可能性が示唆された。
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